ファイナンシャルレバレッジとは借入金で得た資産の比率のことを指します。
比率の計算式は、(総資産÷自己資本)×100で表わされています。
借入金でどれほど資産を購入しているかを表わす指標となっています。
レバレッジとはテコの原理という意味を持ちますが、
自己資本で資産を取得して運用した場合より自己資本と借入金を合わせて運用した方が、
自己資本に対する投資利回りが向上することをレバレッジ効果と呼んでいます。
レバレッジ効果を、例を挙げて説明していきましょう。
1億円の自己資金でアパートを取得したとして、毎年500万円の 家賃収入による所得が発生したとすると、この場合の自己資本の 投資利回りは5%(500万円÷1億円)になります。
ファイナンシャルレバレッジは100%(総資産1億円÷自己資本1億円)で 借入依存度は0%、収益割合は5%(家賃収入による所得÷アパート1億円)となります。
今度は自己資金に借入金5000万円を加えて1億5,000万円の
アパートを取得したケースを考えてみます。
ファイナンシャルレバレッジは、 150%(アパート1億5000万円÷自己資本1億円)となります。
収益割合は変わらないとしたら、毎年の家賃収入による所得は750万円 入ってくることになります。借入金の返済額が元利合計で200万円とした 場合の自己資本の投資利回りは、550万円÷1億円で5.5%となります。
550万円は家賃による所得から借入金の元利合計払いを差し引いた金額です。
借り入れをして資産を運用した方が、自己資本に対する
投資利回りが上がったわけですから、レバレッジ効果があった 資金運用を行ったと言えます。
しかし前述の例で借入金の返済額が300万円になると 自己資本の投資利回りは4.5%に下がってしまいます。
一つの目安として資産から生じる収益割合が
返済割合(借入返済額÷借入金)より高い場合は、 借入金をして資産を取得して運用した方が 自己資本に対する投資利回りは高くなっていくようです。
月: 2022年5月
有利子負債とは
有利子負債とは、
会社が利子を付して返済していく借入金や 社債などの負債のことを言いますが、借入金のない会社は皆無と 言っていいほど会社の貸借対照表を拝見すると、有利子負債の 勘定科目が並んでいます。
有利子負債が少ないほど健全な財務状況だと判断されるのが一般的ですが、 多額の設備資金を必要とする場合には、どうしても金融機関のお世話に 成らざるを得ない会社が大半です。
有利子負債の支払利息は損金に計上できるし、 株主収益率より低いので経費を掛けずに資金を調達できるという利点はあるにせよ、 有利子負債が過剰になれば企業経営を圧迫するのは目に見えて明らかです。
ただ借入金を活用して経営するのも必要なことです。
したがって、どの程度が許容範囲なのかを認識することも大切です。
許容範囲の指標として活用されるのが有利子負債依存度や 有利子負債比率、有利子負債キャッシュフロー倍率などがあります。
有利子負債依存度は総資産に占める有利子負債の比率を 表わすもので、その値が低いほど健全な財務体質であると言えます。
一般的に50%くらいまでは大丈夫と評価されるようですが、 20%以内に抑えられるのが理想です。
有利子負債比率は自己資本に占める有利子負債の割合を示す数値です。
こちらも低い方が健全と評価されますが、 比率が1を超えると危険信号、0.5以下であれば及第点と 言ったところでしょうか。
有利子負債キャッシュフロー倍率は、有利子負債の金額を キャッシュフロー(営業利益と減価償却費の合計)で除した 数値ですが10倍以下であれば過剰債務ではないと判断されています。
いずれにせよ有利子負債が増え過剰債務の状態になれば
経営のキャスティングボードは借入金が、つまりは金融機関が 握ってしまうことになりますので、借入金の許容範囲を見定めながら 有利子負債を調整することが必要となります。
貸倒引当金とは
貸倒引当金とは、売掛金など将来貸し倒れになる危険性のある金銭債権について、
あらかじめ一定の貸し倒れ金額を見積もって費用に計上する引当金のことを言いますが、 貸借対照表上の資産に計上します。
貸し倒れになることが予測される債権を資産として計上することは、
過大に資産を計上することにもなり好ましくないという考え方に 基づくものと言えるでしょう。
貸倒引当金の対象となる債権は、売掛金・貸付金・受取手形・未収地代家賃などですが、 引当金の計算方法は会計上と税法上で差異があります。
会計上は取り立て不能の恐れがある金銭債権については、個別に取り立て不能額を 貸倒引当金として処理し、その他の金銭債権については貸倒実績率相当分を引当金に 計上します。一方、法人税法上では金銭債権を個別評価金銭債権と一括評価債権に 区別して引当金額を計算します。
法人税法上における個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の計算は、会社更生法や民事再生法に よる債権の切り捨て部分を基に引当金額を個別に評価する方法と、債務者が債務超過の状態で あることが認められた場合に実質的に取り立て不能な金額を引当金とする方法によります。
法人税法上では企業独自の判断に客観性を加味した取扱いになっているようです。
また、一括評価債権に係る貸倒引当金の計算は、過去3年間の貸倒実績率を基に計算する方法と 貸倒実績率に変えて法定繰入率を使用して引当金を計算する方法があります。
法人税法上で計算した引当金が繰入限度額となりますから、損金経理した引当金の金額が 限度額を超えていた場合には申告調整が必要となります。
実務では決算期に前期の貸倒引当金との差額を貸倒引当金繰入や貸倒引当金戻入勘定で 調整する差額補充法と、前期の貸倒引当金を全額戻し入れた後に今期の貸倒引当金を 一括計上する洗替法の二通りの処理方法があります。
法人税法上の繰入限度額を超えて貸倒引当金の計上がある企業の場合は、
不安定な経営状態の取引先をそれだけ抱えているとも言えます。
減価償却とは
減価償却とは何かを簡単に説明すれば、
「資産の価値は時の経過と使用頻度に応じて減少していくのだから 費用もそれに応じて計上していく」となるのでしょうか。
1年に200万円の売上を上げる5年間使用できる500万円の機械を 購入したとしましょう。
仮に購入初年度に全額機械の購入費を計上してしまうと 1年目は300万円の赤字が計上され、2年目から5年目は200万円の 黒字が計上されるというバランスの悪い収支になってしまいます。
会計上は500万円÷5年=100万円を各年度の減価償却費として費用化して、 各年の売上200万円から100万円を差し引いた100万円の利益が 5年間に渡って計上されることになります。
実際の減価償却費の計算は 少々複雑で、このような単純な計算にはなりませんが、大まかな考え方としては こんな感じです。
費用の効果を資産の使用期間に振り分けていくのが 減価償却の大きな考え方の一つです。
計上する費用を減価償却費、資産価値がなくなる期間を見積もった年数を 耐用年数と呼んでいます。
資産に見合った耐用年数に割り振って減価償却費を 損金経理していけば資産に投下した購入費用は耐用年数期間中に、 ほぼ全額費用化されるということです。
なお減価償却の対象となる資産のことを「減価償却資産」と呼んでいますが、 全ての資産が減価償却の対象となる資産ではありません。
土地や書画骨董品などは対象とはされていません。
資産を購入して耐用年数を企業ごとに任意に見積もって減価償却費を 計上するのが本来の姿かもしれませんが、
税法上で減価償却費を損金経理できる 償却限度額が定められていますので、
多くの企業は税法上の耐用年数を採用しているようです。
税務上の取り扱いでは、購入費用が10万円未満の資産や使用可能期間が 1年未満の資産は減価償却資産とせずに、その年に全額費用に計上して 構わないとされています。
この他にも税法では特例を認めていて、 30万円未満の少額減価償却資産は単年度で損金経理しても構わないとされていたり、 20万円未満の減価償却資産は一括償却資産として3年で償却できる制度があります。
実務では税法を絶えずチェックしながら減価償却費を計算する 作業が必要になってきます。
欠損金の繰越について
欠損金とは税務会計上で繰り越せる赤字のことを言います。
税務会計は益金から損金を控除したものが損益とされますから、 収益から費用を差し引いて損益を求める財務会計上の繰越の赤字と差異が生じます。
財務会計上は費用としたものでも、税務会計上は損金とされない場合が多々あるからで、 益金に関しても同様のことが言えます。
企業は決算した後に法人税法に適合させるため、申告調整を行ってから
法人税の申告書を作成します。
財務会計上の決算書の損益に税務上の取り扱いによる加算と減算を行って、
法人税の課税対象となる利益や損失を確定させるわけです。
ここでいう加算・減算はいわゆる法人税の申告調整と言われるものですが、
何種類もの法人税申告書別表を使って課税対象所得を計算します。
税務上で欠損金が生じた場合には、
欠損金の繰越控除と欠損金の繰り戻し還付の制度があります。
欠損金の繰越控除とは、ある事業年度に生じた欠損金を 翌期以降の黒字の金額から差し引いて課税対象所得を計算する制度です。
青色申告法人として申告している年度の欠損金のみ繰り越せますが、 仮に何らかの事情で白色申告法人になっても青色申告法人として 申告した欠損金は繰越処理が出来ます。
欠損金の繰越控除については、平成23年度の税制改正により 平成20年4月1日以後に終了した事業年度から、繰り越せる期間が 7年から9年に伸びました。ただし中小法人とされない資本金1億円を 超える法人については、繰越控除限度額の規定が加えられました。
中小企業にとっては繰越期間の延長だけというメリットのある改正が されましたが、同時に帳簿の保存期間も9年に伸びています。
欠損金の繰り戻し還付とは、青色申告をした年度の欠損金を前年度の 黒字に繰戻して、前年度の法人税の還付を申請する制度です。
この制度は一定の場合を除き、平成4年から適用を停止されていましたが、 中小企業については平成21年2月1日以後に終了する事業年度から 適用されることとなりました。
ただし還付の請求書を提出したら、 100%に近い確率で税務調査を受けることを覚悟しないといけないでしょう。
税務調査で還付の適否が判断される制度とも言えます。
ブレークイーブンとは
ブレークイーブン(Break Even)とは費用と利益が一致することを言いますが、
損益分岐点と理解されています。
損益分岐点はBreak even pointとも呼ばれています。
総費用を賄うために必要な売上高の金額や販売数量が損益分岐点になります。
損益分岐点を計算してみましょう。
損益分岐点を計算するには、売上に関係なく掛かる費用(固定費)と 売上に伴い変動して掛かる費用(変動費)の計算が必要となります。
売上に関係なく1事業年度の事務所の家賃が100万円、人件費が200万円、
広告宣伝費が75万円掛かり、一つの商品の仕入れに掛かる費用は300万円で
粗利益率が20%ありますという販売業の場合の損益分岐点はいくらになるでしょうか。
仕入が変動費、家賃と人件費、広告宣伝費を固定費とします。
粗利益が20%ですので300万円÷(1-20%)=375万円が 商品が1個売れた時の売上で粗利益の金額は75万円になります。
固定費の合計が375万円ですので、375万円÷75万円=5、
商品5個分の数量と売上が損益分岐点になります。
375万円×5個=1875万円の売上を上げれば損益分岐点に到達です。
損益分岐点の計算式は一般的には、
損益分岐点=固定費÷(1-(変動費÷売上高))で表わされますが、
前述の例を当てはめていくと、375万円÷(1-(300万円÷375万円)と
なり、答えは1875万円になるので一致することが分かります。
通常は決算書上で販売費・一般管理費が固定費に当たり、
売上原価が変動費とされますが、販売費・一般管理費の中に
変動費が混入していないか、売上原価や製造原価の中に
固定費が含まれていないかをチェックする必要があるでしょう
。 損益分岐点の計算では固定費と変動費の棲み分けが重要なポイントになります。
そして変動費や固定費の効果的な運用がされ削減されると損益分岐点が
下がってきますので、同じ事業活動で利益が増えていくことになります。